医師会ニュース

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2019年02月12日

新型インフルエンザ等研修が開催されました

平成31年2月12日(火)19時より、ベイタウン尾道において、平成30年度感染症研修会が開催されました。その中から、『新型インフルエンザ等について』と題してご講演された福山市民病院麻酔科・がんペインクリニック科長 小山祐介先生に内容をまとめていただきましたので、次のとおり掲載させていただきます。
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本日の内容は,3つの項目を予定している.

 

1)2018/19インフルエンザの状況

  …現在までの,広島県下,および,県東部保健所管内(尾道市,三原市,世羅町)の流行状況を報告する.インフルエンザウイルスの分離検出状況,厚生労働省が発出した「平成30年度 今冬のインフルエンザ総合対策について」を紹介する.

 

2)新型インフルエンザへの対応について

  …昨年10月に東京で開催された「平成30年度 新型のインフルエンザの診療と対策に関する研修」(内閣官房・厚生労働省主催)の内容から,国の新型インフルエンザ対策の現状を中心にふれ,その中で,本日の研修の最大のtake home messageととらえていただきたい,新型インフルエンザ発生に際しての対応の要点を述べたい.また,厚生労働省が提供しているいくつかの資料(治療ガイドライン,発生時の診療継続計画作りの手引き,啓発動画)を紹介する.さらに,昨年3月に発足した広島県感染症医療支援チームと,それが平成30年7月豪雨災害においてJMATとして活動したことを報告する.

 

3)その他

  …最近話題にのぼっている抗インフルエンザ薬と耐性について,さらに,近頃問題となっている感染症のうち,梅毒および麻しんについて,若干の情報提供を行う.

 

以下,当日の内容を記述する.

なお,インフルエンザ,および,新型インフルエンザについての一般的な内容については,厚生労働省がそれぞれについてQ&A形式で用意しているので参照いただきたい.

・インフルエンザ全般に関して「インフルエンザQ&A」(厚生労働省)

 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html

・新型インフルエンザについては

 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html

 

1.2018/19インフルエンザの状況

 

広島県は今季,1月に入り医療機関への受診件数の増加が顕在化し,月半ばから下旬にかけ増えた.2018年51週(2018年12/17~12/23)に注意報レベル(12月27日発令),2019年2週(1/7~1/13)に警報レベル(1月17日発令)となった.

なお,広島県下は,県東部保健所も含め,すべての保健所管内で今年第4週をピークに減少に転じている(研修日当時).

 

インフルエンザウイルス分離・検出速報

https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-inf.html)から,全国の状況をみると,A(H1)pdm2009およびA(H3)の流行が目立つ.また,抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスによると,A(H1N1)pdm2009およびA(H3N2)において,エンドヌクレアーゼ阻害薬であるバロキサビルの耐性が報告された.

 

今冬のインフルエンザ総合対策について

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/influenza/index.htmlによると,咳エチケットや手指消毒を含む感染防止策を徹底すること,高齢者の入所施設において対策を推進すること,などが再度指摘されている.なお,ワクチンおよび抗インフルエンザ薬の供給に関して,現時点で問題はないようである.

 

*参考として「2017/18シーズンのインフルエンザのまとめ」(国立感染症研究所,厚生労働省結核感染症課 平成30年6月15日)を紹介する. 

 https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/influ/fludoco1718.pdf#search=%27%E4%BB%8A%E5%AD%A3+%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B6+%E7%89%B9%E5%BE%B4+%E9%87%8D%E7%97%87+%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80%27

 

2.新型インフルエンザへの対応について

 

 2018年は,新型インフルエンザに関して,国内で大きな動きはみられなかった.

研修事業として,昨年10月28日,東京において「平成30年度新型インフルエンザの診療と対策に関する研修」(主催:内閣官房,厚生労働省)が開催された.本研修の配布資料はインターネットで閲覧可能である.

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/kouen-kensyuukai/h30.html

 

 1918年の通称スペインインフルエンザから,およそ10~40年の周期で出現し世界的な流行を繰り返している新型インフルエンザへの対応を理解する上では,次の4点をまずおさえておきたい.

 1)海外発生期において,ウイルスの侵入と拡大を遅らせること

 2) それと併行して,医療提供体制の強化をはかること

 3) 国内さらに県内発生早期において,感染拡大の抑制と流行規模の平坦化につとめること

 4) 感染期においては,流行のピークを下げて,医療への負荷を減らすこと

 それらにより,水際作戦を突破して国内にもたらされた感染に対して,

・正確でわかりやすい情報提供を行うこと

・最悪のシナリオを用意し,かつ,状況により柔軟に対応すること

(県対策本部の設置とともに,医療相談および情報共有体制も整備される)

・不要不急の外出の自粛要請,施設の使用制限の要請,各事業者における業務

縮小等により接触機会の抑制等の感染対策

・ワクチンや抗インフルエンザ薬等を含めた医療対応

を組み合わせ,総合的に取り組むことが必要である.

 

なお,治療については,「成人の新型インフルエンザ治療ガイドライン第2版 2017年11月」が利用可能である.

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000190793.pdf

 

また,各医療機関等施設での備えとして「新型インフルエンザ等発生時の診療継続計画作りの手引き」がBCP(business continuity plan)策定の一助となる.

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/dl/guide_tebiki-01.pdf

 

医療従事者向けへの啓発として,「新型インフルエンザ等発生に備えて医療機関に求められること」リーフレット

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/dl/pamphlet131220_01.pdf

とともに,動画も用意されている(23分3秒)のでご参照いただきたい.https://www.youtube.com/watch?v=Mv6fBwTiIdk

 

内閣官房はインターネットで「新型インフルエンザ等対策」という特設ページにより,政府の取り組みを一般にもわかりやすい形で啓発を行っている.「新型インフルエンザクイズ」と題して10問用意するなど,幅広い情報提供を行っている.

https://www.cas.go.jp/jp/influenza/

 

広島県感染症医療支援チームの活動について:

昨年3月に新型インフルエンザ発生に備えて,県下7病院から構成員を募り「広島県感染症医療支援チーム」が結成された.福山市民病院からは2チームが出ている.

https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/hcdc/cdc-photoportrait-iryoushien-team.html

 このチームは平成30年7月豪雨災害においては,JMATとして県下避難所数カ所において感染対策活動を展開した.

  

3.その他

 

・抗インフルエンザ薬について(注:演者に利益相反なし)

 現在よく利用されているのは,ノイラミニダーゼ阻害薬の4種類と,キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤の1種類である.

 前者のうち,最初に出てきたのは,オセルタミビル(経口薬:タミフル)およびザナミビル(吸入薬:リレンザ)で,これらはインフルエンザの治療だけでなく予防にも使われる.その後,ペラミビル(点滴薬:ラピアクタ),さらにラニナミビル(吸入薬:イナビル)が登場した.

抗インフルエンザ薬の使い分けについては,投与経路,持続時間,副作用,治療目的か予防か,耐性ウイルスの出現,などを勘案して選択されている.一方,昨年承認されたバロキサビル(ゾフルーザ)についてもやはり,半減期(95.8±18.2 時間),使用上の注意,投与目的等をふまえた上で臨床の現場において適用されているが,今後耐性ウイルスの検出ほかにも注意する必要がある.

*関連資料

 「新型抗インフルエンザ薬バロキサビル マルボキシル耐性変異ウイルスの検出」(IASR 2019.1.24)

https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/flutoppage/593-idsc/iasr-news/8545-468p01.html

 横浜でのA(H3N2)耐性ウイルスについて

https://www.eurosurveillance.org/content/10.2807/1560-7917.ES.2019.24.3.1800698

 

http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/rinji/influenza/2018/xofluza-r.pdf#search=%27%E6%A8%AA%E6%B5%9C%E5%B8%82+%E3%82%BE%E3%83%95%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B6%27

 

3.その他

 

・梅毒について:

 広島県における梅毒の発生者数は,2014年が9人,2015年が22人であったが,その後2016年に49人,2017年に138人,そして2018年には176人と急増しており,とくに本県では20代女性が51.6%と過半数を占めている.

 https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/hcdc/baidoku.html

人口100万あたりの都道府県別報告数で,広島県は2017年第3四半期で5位,2018年同期で4位であった.なお同期の上位3位は,東京都,大阪府につづいて隣県の岡山となっており,今後の動向に注意する必要がある.

*参考「梅毒に関するQ&A」(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/qanda2.html

 

・麻しんについて

 今年に入って県東部で,麻しんの発生が 5件報告されている.2017年の東広島の集団発生から2年近くとなる今回の事案について,注意が必要であるが,いずれも海外からの帰国者からの感染であり,帰国して以降に潜伏期を経てカタル期に入り,感冒様症状として医療機関に受診する場合が少なくない.海外渡航歴の確実な把握は必須であるとともに,ワクチン接種歴と免疫獲得状況の確認を徹底するべきである.広島県によるリーフレット「麻しんと風しん 大人も注意!」を活用していただきたい.

 https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/311799.pdf