医師会ニュース

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2013年06月01日

***医師会だよりNo.9***

タバコとPM2.5

 タバコを吸うことによって、肺疾患、心臓病、がんといった病気になりやすくなることは皆さんよくご存知と思います。
 ではタバコを吸わない人が周囲の人のタバコで害を受ける「受動喫煙」についてはどうでしょう。タバコを吸わない人達を、家庭内での受動喫煙がある群とない群に分けて年間の死亡率を調査したところ、受動喫煙により死亡率が男性では20%、女性では30%もの増加がみられ、特に心臓病と脳卒中による死亡が多かったという報告があります。家庭内だけでなく職場や飲食店などでの受動喫煙の影響も含めると死亡率の上昇はもっと明らかになるだろうと言われています。
 最近、新聞やTVで騒がれている大気汚染物質PM2.5は、春になると大陸から偏西風に乗って大量に飛来して来ますが、直径が毛髪の断面の約30分の1というとても細かい微粒子で、肺の奥深くまで入り込んで色々な病気を引き起こすことが知られています。中国ではこの10年間で大気汚染による死亡者数の増加を120万人と予想しています。このPM2.5は草木や化石燃料などを燃やすことで発生しますが、実はタバコの煙もPM2.5の1つなのです。日本の環境基準では70μg以上になると外出を控えるよう注意報が出ますが、北京の大気汚染のひどい日には、1日平均500μgという人体に危険なレベルまで達していたそうです。
 ところが日本にも北京なみの高濃度の場所があります。喫茶店や居酒屋、タクシーの中といった締め切った場所でタバコを吸うとPM2.5濃度はすぐに100~500μgまで上昇します。屋外の低濃度のPM2.5よりも室内での受動喫煙の方がよほど危険なレベルであることがわかると思います。
 また、空気のきれいな山間部の都市(PM2.5が10μg程度)と自動車工業の盛んな都市(PM2.5が30μg程度)を比べてみると、PM2.5が10μg増えるごとに15%ずつ死亡率が増えるという報告もあり、受動喫煙の研究とよく似た結果となっています。
 タバコや大気汚染の被害は病気という形で起こるため、なかなかその危険性を実感しにくいのですが、こうして死亡率の増加をみると改めて大変危険なものだとよくわかりますね。室内での喫煙は大気汚染以上に危険なものということをしっかり認識しましょう。